Mekong Delta 2017
メコンデルタ2017 4か国80名の参加者が、医療労働改善を通じ参加型改善を学ぶ
参加型改善活動を学ぶ国際ワークショップ、メコンデルタ国際研修が今年もベトナム社会主義共和国カント市(ホーチミン市から約180㎞南西)で、8月17日から24日にかけて行われ、日本、タイ、フィリピンから計25名、ベトナムから29名が参加しました。日本の運営委員会は、労働科学研究所と東京労働安全衛生センターで、ベトナム側はカント医科大学でした。本年のテーマは昨年に引き続き「ヘルスケアワーク」で、カント市の循環器病院を会場に、伝統医療病院、腫瘍病院、循環器病院25名の医師、看護師、医療スタッフに、4か国の参加者がトレーナーとなって、「医療労働における安全衛生対策」の研修を行いました。
安全衛生対策の研修を行う、といっても、参加者は、医学系の学生もいれば経済を学んでいる学生、建設労働組合の幹部もいます。このプログラムの特徴は、改善対策をイラストと簡潔な文書で示すアクションチェックリストを用いて職場巡視すること、その印象に基づいて、運営委員会が事前に準備した技術領域テキストに、参加者が収集した良好事例を挿入して説明する、そのうえで25名の医療労働者に改善の方法を提示し、医療労働者自らが改善計画を作成する、ことにあります。
したがってメコンデルタ国際研修では、参加型改善活動を学ぶ目的で参加した、4か国計54名の参加者の参加型トレーナー研修が進むと同時に、医療労働者25名は、医療現場での改善の知識を得て改善計画を作り上げる、という二つの研修が進行します。
リピーターの経験ある参加者によって、グループワークが進行
8月17日、ホーチミン空港に到着した参加者は、チャーターバスに乗って4時間半かけてカント市に着きました。ホテルには「メコンデルタ国際研修のバナー」が掲げられ、ベトナム側運営委員会のグエンフォントアイさんが、歓迎のスピーチをしました。
8月18日は、開会式が行われ、小木和孝さん(大原記念労働科学研究所)の基調講演、五十嵐千代さん(東京工科大学)の良好写真事例投票が行われました。
その後、参加型改善活動を学ぶグループワークが行われました。仲尾豊樹がメコンデルタ国際研修17年間の歴史を説明し、グエンフォントアイさんが、参加型改善で重要な6つの目標を説明しました。その後吉川悦子さん(日本赤十字医療大学)が、参加型改善の技術領域を説明し、ワンペンソンハウさん(チェンンマイ大学)がアクションチェックリストの使い方、センター事務局の外山尚紀さんが良好事例について説明を行いました。学習には、良好事例の写真を使った写真投票やグループワークが含まれていて、石川雄一さん(がん研究所)、佐野由美さん(大原記念労働科学研究所)、飯田裕貴子さん(東京工業大学)らがトレーナーになりました。
8月19日は、循環器病院と腫瘍病院を回って良好事例写真を収集し、その後一日半は、4グループに分かれて、22日に行われる医療労働者のためのワークショップのプレゼンテーションを作成しました。プレゼンテーションの時間は技術領域にちなむゲームを含めて30分、英語とベトナム語で行います、海外の参加者は英語の簡単な説明文を作り、ベトナム人はわかりやすく現地の医療労働者に説明するために、リハーサルを含め集中した時間を過ごしました。
25名の医療労働者が、参加型改善を学んで職場ごとの改善計画を発表
21日はいよいよワークショップです。循環器病院の会場で参加者の企画による開会式が行われ、アクションチェックリストの使い方説明とそれを使った職場巡視、4つの技術領域の説明とそれを受けたグループ討議が、行われていきました。
お昼休みの後には、循環器病院の日本語教室開校式が行われました。病院での日本語教室はカント市では初めての試みだそうです。日本に医療スタッフを派遣することへの現地の意気込みが強く感じられたセレモニーでした。
ワークショップの最後には、「改善の実行」という技術セッションが行われ、海外の参加者がカント市の病院や工場で行われた改善を説明するとともに、腫瘍病院の医師チャンティフォンリさんが、2016年に本プログラムに参加した後の経験を、しゃべってくれました。これらの励ましによって、参加者は自分の職場ごとに分かれて改善計画を作り、発表しました。この改善は、ベトナムの運営委員会が後日収集し、その成果を発表していく予定です
農村や工場を訪問しメコンデルタの参加型改善活動にふれる
22日は、農村部と工場の参加型改善活動の見学会が行われました。2000年からWIND(Work Improvement in Neighbourhood Development)という農村の参加型改善を進めてきたソンハウ農場を訪問しました。中型ボートに乗って農場の運河を移動し、バナナ工場や農民のお宅を訪問しました。お昼には、農場のレストランで、魚釣り大会や目隠しをしてのアヒルつかみ大会をグループ対抗で行いました。午後にはチュンアン農業機械製造工場を訪れました。2015年メコンデルタ国際研修の会場で、その後労使では多くの改善を行っていました。中小企業の参加型改善プログラムはWISE(Work Improvement in Small Enterprises)と呼ばれ、参加型改善の最も基本的なものです。ベトナムカント市でも、この20年間で多くの中小工場がこの活動を取り入れ、安全衛生と生産性の向上を成功させています。
参加型改善国際ワークショップでは、中学生が環境改善活動を報告
23日は、参加型改善のミニ国際ワークショップが、カント医科大学で行われ、日本から4演題、タイ2演題、フィリピン1演題、ベトナム3演題が発表されました。日本からは全建総連東京都連合会の現場改善活動の報告が島田照夫労働対策部長によって行われ、島田さんははっきりした英語でどうどうと発表されていました。東京工科大学の学生5名は、大学紹介と日本の四季を発表して、皆の関心を集めました。ベトナムからは、中高生の環境保護活動を参加型で進めているWINDY(Work Improvement in Neighbourhood Development for Youth)の紹介を、ロンチュエン中学校のバン君が行い、その後お父さんとのコラボで、リユースミルク缶を利用して作ったドラムで、演奏を披露し大喝采をうけました。
参加者たちの熱気で盛り上がったさよならパーティ
夜は修了式とさよならパーティが行われました。カント市から参加型活動にゆかりのあるさまざまな方々が集まり、参加者たちは、日本人はアオザイを着、ベトナム人はゆかたを着て、相互の文化交流を行いました。長崎大学の轟晋太郎さんの指導で行ったよさこいソーランは、日本人参加者にフィリピンのジェームスさんも混じって行われ、会場は熱気に包まれました。さよならパーティの最後は、ハグと号泣の嵐になり、皆一週間の思い出を心に刻み、別れを惜しみました。
メコンデルタ国際研修は、今年も大成功で幕を閉じました。ベトナムの病院の人々は、これを機に参加型活動を進めるでしょうし、参加者同士の国際交流は深く発展するに違いありません。メコンデルタ国際研修は、そのような機会を作るすべて企画から運営まで参加型改善のプログラムとして、今後も継続します。皆さんもベトナム・メコンデルタで、この息吹にふれてみませんか!